固執性とは|高次脳機能障害の「こだわりが止まらない」を当事者が説明します

固執性とは 「こだわりが止まらない」を当事者が説明します 障害と向き合う

固執性(こしつせい)とは、ひとつのことにとらわれて、頭から離れなくなる状態のことです。高次脳機能障害の「社会的行動障害」に含まれる症状のひとつです。

「それ、もういいんじゃない?」
「なんでそんなにこだわるの?」

私は12歳のときに脳出血を起こし、右半身麻痺と高次脳機能障害の当事者になりました。この言葉は、何度も言われてきました。

こだわりは誰にでもあります。でも高次脳機能障害があると、そのこだわりが極端に強くなり、自分でも止めたいのに止められなくなります。

この記事では、固執性とは何かという説明に加えて、止められないとき本人の中で何が起きているのかを書きます。ここは外からは見えない部分です。

この記事でわかること

  • 固執性の読み方と意味
  • ふつうの「こだわり」との決定的な違い
  • なぜ自分で止められないのか
  • 私が実際に人間関係を壊しかけた話
  • 効く声かけと、逆効果の声かけ

固執性(こしつせい)とは

読み方と意味

読み方は「こしつせい」です。「固執」は本来「こしゅう」とも読みますが、医療や福祉の現場では「こしつ」と読まれることがほとんどです。

意味は、特定の話題・行動・思考にとらわれ続けて、柔軟に切り替えることができなくなる状態です。高次脳機能障害の後遺症として現れます。

ふつうの「こだわり」との違い

よく誤解されますが、固執性はこだわりが「強い」だけの話ではありません。決定的に違うのは「やめられるかどうか」です。

ふつうのこだわり固執性
やめられるか必要ならやめられるやめたくてもやめられない
自覚こだわっている自覚があるまずいと分かっていても口が動く
あとの気持ちとくに残らない強い後悔と自己嫌悪が残る
人間関係影響しない範囲で収まる関係が壊れるところまでいく

どんな形で出るか

・過去にあった失敗を、何日も思い出し続ける
・納得いくまで同じ質問を繰り返してしまう
・特定の手順や順番にこだわって、変えられない
・自分が「正しい」と思った意見から降りられない
・一度気になった細部が、頭から消えない

なぜ自分で止められないのか

① 「切り替える」機能が働きにくい

脳には、いま注意を向けているものから別のものへ切り替える働きがあります。高次脳機能障害では、この切り替えがうまくいかなくなると説明されます。

私の感覚でいうと、考えが一本のレールに乗ってしまって、ポイントが切り替わらない状態です。別の線路があることは分かっている。でもハンドルが動かない。

② 「正しさ」から降りられない

私がいちばん苦しんだのはここです。正しくないやり方を認めることが、どうしてもできませんでした。

相手が譲歩しているのは分かる。空気が悪くなっているのも分かる。それでも「間違っている」と思ったら、そこから降りられない。譲ることが、自分を否定することのように感じてしまうんです。

③ 不安が固執を強める

疲れているとき、不安なとき、環境が変わったとき。こういうときほど固執は強く出ます。いつも通りにすることで、不安を抑えようとしているのだと思います。

私の体験|グループ作業で浮いてしまった日

あるとき、グループでの作業で、私は順番ややり方に異常なほどこだわってしまい、周囲から浮いてしまったことがあります。

「いや、これじゃないとダメなんだって」
「なんで変えるの?さっきと言ってることが違うじゃん」

今思えば、柔軟に対応する力が欠けていたのだと思います。でもその時の私には、それが分かりませんでした。

自分でも「もう言わない方がいい」「空気が悪くなる」と頭では分かっているのに、こだわりが止まらない。

そして、あとで一人になってから「またやってしまった」と落ち込む。この繰り返しでした。

固執性のいちばんつらいところは、症状そのものではなくそのあとに来る後悔だと思っています。

「頑固」「わがまま」に見えてしまう理由

固執性が理解されにくい最大の理由は、見た目には「ただ頑固なだけ」「わがまま」に見えてしまうことです。

高次脳機能障害は外から見えません。麻痺があれば「体が不自由なんだな」と分かってもらえます。でも「切り替えられない」は、顔にも体にも出ません。

だから、症状が性格として受け取られます。本人は必死なのに、伝わらない。このもどかしさが、当事者をさらに追い詰めます。

私がやっている5つの対処

① 「今日は決めない」と先に言う

その場で結論を出そうとすると、固執が始まります。だから最初に「一晩考えます」と言ってしまう。時間をおくと、レールは自然に切り替わることが多いです。

② 譲るのではなく「試す」と考える

「相手のやり方に譲る」と思うと降りられません。でも「一回だけ試してみる」なら降りられます。言葉の置き換えですが、私にはこれが効きました。

③ こだわっていい場所を、先に決めておく

全部を我慢するのは無理です。だから「ここは譲らない」「ここは任せる」を事前に決めます。枠があると、その外では力が抜けます。

④ 疲れている日は、話し合いをしない

固執性は疲労と直結します。予防が最も効きます。

⑤ 後悔を、反省で止める

「またやった」で止めて、「だから自分はだめだ」まで行かない。ここを分けられるようになるまで、私は何年もかかりました。

ご家族・周囲の方へ

実際に言われて効いたこと、逆効果だったことを書きます。

効いた声かけ逆効果だった声かけ
「じゃあ明日もう一度決めよう」と時間をくれる「今ここで決めて」と急かされる
「一回だけ試してみない?」と提案してくれる「普通はこうでしょ」と正しさで押される
こだわりの理由を先に聞いてくれる「またそれ?」とうんざりされる
別の話題に自然に移してくれる「頑固だね」と性格の話にされる

ポイントは「正しさで勝とうとしない」ことだと思います。正しさで来られると、こちらは正しさで返すしかなくなり、絶対に降りられなくなります。

よくある質問

Q. 固執性の読み方は?

A. 「こしつせい」です。医療・福祉の現場ではこの読み方が一般的です。

Q. わざとやっているのですか?

A. いいえ。私の場合、まずいと分かっていても口が動きます。止められるものなら、とっくに止めています。

Q. 強迫性障害と同じですか?

A. 別のものとして扱われます。診断や区別は医師の領域なので、気になる場合は主治医に相談してください。

Q. 治りますか?

A. 私の場合、なくなってはいません。ただし頻度は確実に減りました。症状を消すより、出にくい環境と降りやすい言葉づかいを用意するほうが現実的だと感じています。

まとめ

この記事のまとめ

  • 固執性(こしつせい)は、切り替えられなくなる症状
  • ふつうのこだわりとの違いは「やめられるかどうか」
  • 本人は分かっていても止められず、あとで強く後悔している
  • 正しさで押すと絶対に降りられない。「一回試す」なら降りられる
  • 疲れている日は話し合いを避けるのが一番の予防

こだわりが止まらないのは、頑固だからでも、わがままだからでもありません。

もし今、同じことで人間関係に悩んでいる方がいたら、あなたのせいではないということだけ、覚えておいてほしいです。私も、そこにたどり着くまでにずいぶん時間がかかりました。

あわせて読みたい

高次脳機能障害とは?見えない障害を知ってほしい
高次脳機能障害とは何か。小6で脳出血を経験した当事者が、見た目ではわからない障害の症状と困りごとをやさしく説明します。
高次脳機能障害の「退行」とは|子どもみたいになる理由を当事者が説明します
「子どもみたいになった」と戸惑うご家族へ。高次脳機能障害の退行と依存はなぜ起きるのか、そのとき本人の中で何が起きているのかを当事者が説明します。
【高次脳機能障害】「感情コントロール」ができない難しさ、社会的行動障害と向き合う日々
高次脳機能障害による感情の爆発や涙が止まらない症状。本人の努力と支援の大切さを体験から伝えます。
タイトルとURLをコピーしました