はじめに
小学6年生のとき、私は脳出血で倒れました。
命は助かりましたが、右半身に麻痺が残りました。それから今日まで、私はずっと左手だけで生活しています。
この記事では、片手になって「できなくなったこと」と、そこから「できるようになったこと」を、順番に書いていきます。同じように片麻痺になった方や、そのご家族に届いたらうれしいです。
右半身が動かなくなって、できなくなったこと
倒れる前は、当たり前にできていたことばかりです。それが、ある日を境に全部できなくなりました。
服が着られない
ボタンが留められません。シャツの袖に腕を通すのも、片手だと順番があります。左手で右腕を持ち上げて、先に麻痺のある側から袖を通す。この順番を知るまで、着替えだけで汗だくになっていました。
食事が一人で完結しない
お皿が動きます。フォークで刺そうとすると皿が逃げる。パンをちぎることも、ペットボトルを開けることも、片手ではできません。
字が書けない
私は元々、右利きでした。利き手が動かないというのは、字が下手になるという話ではありません。文字という手段そのものを一度失うということでした。
一番つらかったのは、できない自分をずっと見ていること
道具がないことより、時間がかかることより、つらかったのはこれでした。
前の自分を知っているぶん、今の自分が引き算に見えるんです。これができない、あれもできない。数えるほど気持ちが沈んでいきました。
高次脳機能障害もあったので、うまくいかない理由が自分でも分からない時期が長く続きました。そのことは別の記事に書いています。
できることを一つずつ増やしていった
気持ちが変わったきっかけは、大きな出来事ではありませんでした。「片手でできる方法」が一つ見つかったことです。
道具を変える
滑り止めマットを敷くと、皿が逃げなくなりました。持ち手の太いスプーンなら、握力が弱くても落としません。ボタンエイドを使えば、シャツのボタンも自分で留められます。
できなかったことの多くは、能力の問題ではなく、道具が合っていないだけでした。
順番を変える
片手には片手の手順があります。麻痺のある側から袖を通す。袋は歯で押さえずに、膝で挟む。缶は太ももに乗せて固定する。
健常の人と同じやり方を片手でやろうとすると失敗しますが、片手用の順番でやると成功します。
頼る先を、あらかじめ決めておく
全部を自分でやろうとすると、必ずどこかで詰まります。だから「これは人に頼む」と先に決めておくことにしました。
その場で頼むのは、勇気がいります。でも事前に決めてあれば、それはお願いではなく段取りになります。
今は、片手の工夫をまとめる側になりました
自分のためにためてきた工夫を、同じ立場の人にも渡せる形にしたいと思うようになりました。それが今つくっている「片手ライフ帳」です。
特別な話ではありません。私が10年かけて一つずつ拾ってきた、地味な工夫の集まりです。でも、この地味な一つが見つかるまでにどれだけ時間がかかるかを、私は知っています。だから渡したいと思いました。
まとめ
右半身麻痺になって失ったものは、確かに多いです。それは今も変わりません。
ただ、できることは増やせます。一気にではなく、一つずつなら増やせる。このブログのタイトルにしている「出来ることを一つずつ」は、きれいな言葉ではなく、私が実際にやってきた方法そのものです。
今できないことがある人に伝えたいのは、それは一生できないという意味ではない、ということです。
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